SalesforceとAWS(Amazon Web Services)は、クラウドコンピューティング市場を牽引する二大リーダーです。
各プラットフォームは独自の強みと特徴を持ち、ビジネスニーズに応じて最適なソリューションを提供しています。
本記事では、SalesforceとAWSについて機能・コスト・スケーラビリティ・セキュリティの4つの観点から比較解説します。
SalesforceとAWSの基本的な違い
Salesforceの概要と特徴
Salesforceは、SaaS(Software as a Service)モデルでCRM(顧客関係管理)を中心としたビジネスアプリケーションを提供するクラウドサービスです。
営業、マーケティング、カスタマーサービスなど、顧客との接点となる様々な部門の業務効率化とデータ活用に優れたソリューションを提供します。
柔軟なカスタマイズと拡張性を備えています。
AWSの概要と特徴
AWS(Amazon Web Services)は、200以上のクラウドサービスを包含するIaaS(Infrastructure as a Service)の代表的プロバイダーです。
仮想サーバー、ストレージ、データベース、ネットワークなどのインフラリソースをオンデマンドで提供し、あらゆる規模のシステムをクラウド上に構築・運用できるプラットフォームを提供します。
マネージドサービスを幅広くラインナップしているのが特徴で、運用負荷を軽減しつつ高度な基盤を利用できる点が強みです。
機能面での比較
Salesforceの代表的機能と用途
Salesforceの代表的な機能には、下記のサービスがあります。
- Sales Cloud:営業活動の管理、パイプラインの可視化、フォーキャスト
- Service Cloud:カスタマーサポート、ケース管理、ナレッジベース
- Marketing Cloud:マーケティングオートメーション、ジャーニー管理、ROI分析
- Einstein Analytics:ビジネスインテリジェンス、予測分析、データ可視化
これらのサービスを通じて、顧客データの一元管理、部門間連携の強化、業務プロセスの自動化を実現します。
AWSの代表的機能と用途
AWSは、基幹系システムの構築に必要な以下のようなサービスを提供しています。
- Amazon EC2:スケーラブルな仮想サーバー、オートスケーリング
- Amazon S3:高耐久性・高可用性のオブジェクトストレージ
- AWS Lambda:サーバーレスアプリケーション、イベント駆動型処理
- Amazon VPC:論理的に隔離されたプライベートクラウド、セキュアなネットワーク
これらのサービスを自由に組み合わせることで、基幹業務システム、Webアプリケーション、データ分析基盤など、様々な業務活動に最適なクラウドインフラを実現できます。
コスト構造の違い
Salesforceの料金体系
Salesforceの料金体系の特徴は以下の通りです。
- サブスクリプション型の料金体系を採用
- ユーザー数や機能に応じた複数のエディションを用意
- 月額または年額の定額料金を支払い
- 初期費用が不要
- コストが定量的で予測しやすい
AWSの料金体系
AWSの料金体系の特徴は以下の通りです。
- 従量課金制モデルを採用
- 使用したリソースに応じて料金が発生
- 初期投資は最小限に抑えられる
- 柔軟なスケーリングが利点
- 複雑なシステムではコストの見積もりが難しい(専用の料金計算ツール有り)
スケーラビリティと柔軟性の比較
Salesforceのスケーラビリティとカスタマイズ性
Salesforceは、マルチテナント方式のアーキテクチャを採用しており、ユーザー数や処理量の増大に応じて自動的にスケールします。
インフラの拡張やメンテナンスはSalesforce側で対応するため、ユーザー企業の運用負荷は最小限です。
また、Salesforce Platformを活用することで、ノーコード/ローコードでのアプリケーション開発が可能です。
Lightning Web Componentsなどの開発フレームワークやAppExchangeのエコシステムにより、柔軟なカスタマイズと機能拡張を実現できます。
ただし、Salesforceの提供する機能の範囲内での拡張が基本となります。
AWSの優れたスケーラビリティと柔軟なインフラ構築
AWSは、ビルトインのオートスケーリング機能や、サーバーレスアーキテクチャによる優れたスケーラビリティを提供します。
EC2インスタンスの数を自動的に調整したり、Lambdaでコード実行数に応じて自動スケールさせたりと、ワークロードの変化に合わせた柔軟なインフラ運用が可能です。
また、200以上のサービスを自由に組み合わせられるため、ユーザー企業の要件に応じた最適なアーキテクチャを設計できます。
AWSの豊富なマネージドサービスを活用することで、運用管理の手間を減らしつつ、高度にカスタマイズされたシステムを構築できるのが強みです。
セキュリティとコンプライアンスの比較
Salesforceの包括的なセキュリティ対策と認証
Salesforceは、情報セキュリティとデータプライバシー保護のリーダー的存在として、包括的なセキュリティ機能を提供しています。
データの暗号化、マルチファクタ認証、アクセスコントロール、監査ログなどの基本的なセキュリティ機能に加え、AIを活用した異常検知や脅威インテリジェンスも提供しています。
また、ISO27001、SOC 1/2/3、PCI DSS、HIPAAなど、主要な業界標準やコンプライアンス認証を取得しており、高い信頼性を担保しています。
Privacy Shieldやバインディングコーポレートルール(BCR)にも準拠し、グローバルなデータ保護規制にも対応しています。
AWSの多層的セキュリティとコンプライアンスプログラム
AWSは、クラウドセキュリティのベストプラクティスに基づいた多層的なセキュリティアーキテクチャを提供しています。
物理的なデータセンターの保護から、ネットワークレベルのセグメンテーション、ホストOSのセキュリティパッチ適用、データの暗号化まで、あらゆる層でセキュリティ対策が講じられています。
AWS IAMによる詳細なアクセス制御、AWS GuardDutyによる脅威検知、AWS Configによる設定管理など、豊富なセキュリティサービスを活用できます。
AWSは、ISO27001、SOC、PCI DSS、FedRAMPなど、業界標準の認証を数多く取得しており、AWS Artifact機能からコンプライアンスレポートを入手できます。
法規制への対応をサポートする各種ツールも提供しています。
まとめ
SalesforceとAWSは、それぞれ異なる強みを持つクラウドサービスです。
Salesforceは、営業・マーケティング・サポートの分野で優れた機能を提供し、素早い導入と高い拡張性、わかりやすいコスト構造が特長です。
一方、AWSは、高い柔軟性とスケーラビリティを備えたインフラサービスとして、基幹系システムの構築に適しています。
そしていずれのプラットフォームも、セキュリティとコンプライアンスに真摯に取り組んでおり、安心して利用できる環境を提供しています。
システムの導入にあたっては、ビジネス要件やITリソース・予算などを総合的に勘案し、最適なクラウドサービスを選択する必要があります。
CRMと顧客エンゲージメントの改善にフォーカスするならSalesforce、インフラの柔軟性とカスタマイズ性を重視するならAWSが適しているでしょう。
本記事が、皆様の意思決定のための一助となれば幸いです。