Salesforceは、生成AIの力を活用したカスタマイズ可能な対話型AIアシスタント「Einstein Copilot」をリリースしました。Einstein Copilotは、Salesforce CRMアプリケーション全体で一貫した対話型UIを提供し、営業、サービス、マーケティングなどのチームの生産性向上と顧客体験の改善に貢献します。本記事では、Einstein Copilotの機能や仕組み、ビジネス効果などを詳しく解説します。
Einstein Copilotとは
組織独自のデータを活用した強力なインサイト生成
Einstein Copilotは、他のAIアシスタントとは異なり、Salesforce組織独自のデータとメタデータを利用して、プライバシーとデータガバナンスを維持しながら、莫大なAIモデルの学習コストを必要とせずに、強力な顧客インサイト(顧客理解)とレコメンデーション(推奨事項)を生成します。
質問への回答、コンテンツの要約、新しいコンテンツの作成、複雑な会話の解釈、ユーザーのタスクの動的な自動化のすべてを、Salesforce CRMアプリケーション全体の一貫した対話型UIから行うことができます。
Einstein Copilotの仕組み
Data Cloudとの連携
Einstein CopilotをData Cloudに組み込むことで、あらゆるシステムからあらゆるタイプのデータを接続・連携させ、ビジネスユーザーが毎日使うSalesforceアプリケーションに統合できます。Data Cloudのゼロ ETL統合機能により、プラットフォーム間でデータを移動する必要がなくなり、シームレスに外部の予測モデルに接続してSalesforceワークフローを使うことができます。
セマンティック検索と非構造化データへのアクセス
Data Cloudのセマンティック検索はEinstein Copilotを強化し、リアルタイムの非構造化および構造化ビジネスデータにアクセスして問題解決やコンテンツ生成ができるAIアシスタントを、セールス、カスタマーサービス、マーケティング、コマース、ITチームに提供します。これにより、データの約80%を占める非構造化データも活用できるようになります。
Einstein Copilotによるチームの生産性向上
直感的なインターフェースとワールドクラスのAIモデル
Einstein Copilotは、AIと対話するための直感的なインターフェイス、ワールドクラスのAIモデル、AIのメリットを享受するために必要なデータとメタデータの高度な統合を提供します。これにより、すべてのSalesforce CRMアプリケーションと統合されたEinstein Copilotが、生産性を大幅に向上させ、顧客体験を向上し、利益率を高めることができます。
各部門でのEinstein Copilot活用例
- 営業担当者は、記録の要約やカスタマイズされたコミュニケーションの生成で、よりパーソナライズされた顧客エンゲージメントを提供し、取引の成約を加速できます。
- サービスチームは、異なるシステムから関連する回答、オファー、データを表示することで、案件解決を合理化し、顧客満足度を高められます。
- マーケティング担当者は、キャンペーン開発の簡素化、パーソナライズされたWebサイトのランディングページ作成、統合顧客プロファイルデータに基づく問い合わせフォーム生成などが可能です。
- Eコマース小売業者は、コンバージョンの高いデジタルストア構築の段階的支援や、複数商品のカタログデータ管理の自動化、多言語商品説明などのコンテンツ開発ができます。
- 開発者は、自然言語を使ってEinstein CopilotにApexコード生成を促し、コードの脆弱性をスキャンするなど、開発を効率化できます。
- データアナリストは、わずか数回のプロンプトで未加工データから実用的なインサイトへ移行でき、関連性の高いビジュアライゼーション構築などを支援してもらえます。
Einstein Copilotのカスタマイズとセキュリティ
Einstein 1 Studioによるカスタマイズ
ユーザーはData Cloudと深く統合されたローコードツールのEinstein 1 Studioを使い、Einstein Copilotをカスタマイズできます。
プロンプトビルダーで再利用可能なAIプロンプトを作成したり、Copilot Builderでアシスタントにカスタムアクションを設定したり、専用のモデルビルダーで独自のLLMを使ってカスタム機能を強化したりできます。
Einstein Trust Layerによる信頼性の確保
Einstein Copilotは、Einstein Trust Layerが提供するプライバシーとセキュリティ対策により、信頼できるAIインタラクションを提供します。
個人情報のマスキング、有害性のある出力のスコアリング、パートナーからのゼロデータリテンション(Salesforceの外部に顧客データが保存されないこと)などの機能で情報を保護します。顧客設定によるデータマスキングで管理者が高度な制御も可能です。また、AIのプロンプトとレスポンスから収集された監査証跡とフィードバックデータはData Cloudに保存され、レポートや自動アラートに活用できます。
Einstein CopilotがCRMの未来を形作る～SalesforceのAI戦略～
対話型インターフェイスによるソフトウェアとの新しい関わり方
Einstein Copilotは、ボタンをクリックするのではなく、主に対話型インターフェイスを通じて人間がソフトウェアと対話する未来を垣間見せてくれます。これは人々がテクノロジーを使用する方法を根本的に変える可能性を秘めています。
Einstein CopilotをSalesforceのEinstein 1 Platformに統合することで、あらゆる規模の企業が生成AIを最大限に活用できるようになります。
繰り返し作業の自動化と戦略的タスクへの注力
Einstein Copilotに質問や指示を与えるだけで、AIが繰り返しの作業を自動化し、ユーザーが簡単に情報にアクセスできるようにすることで、ユーザーはより戦略的で高度な判断力が必要な作業に時間を割くことができます。
また、Copilotは大量のデータを瞬時に分析して、人間が発見するのが困難で時間がかかるようなインサイトを提供します。このようなインサイトは、営業やマーケティング戦略から製品開発やカスタマーサービスに至るまで、あらゆることについて企業がより適切な意思決定を行うのに役立ちます。
人間の「舵取り」による信頼性の向上
Salesforceは、信頼できるAIには人間の「舵取り」が必要と考えています。個々のAIとの対話に人間が介入するスタイルではなく、労力が必要な単純作業をAIが担当し、より人間が注意を払い判断力を行使する必要があるリスクの高い項目に集中できるよう、強力なシステム全体の制御を設計しているのです。
Einstein Copilotの提供開始時期と対象製品
- Einstein Copilotは、対応Editionsへの追加でアクセス可能になります。
- Einstein Copilot日本語版βは、2024年10月提供開始予定です。
- SalesやServiceに対応したCopilot Action日本語版βも、2024年10月提供開始予定です。
- Einstain Copilot for Tableauは2025年7月末までに日本語対応予定です。
まとめ
Einstein Copilotは、Salesforce CRMアプリケーション全体で一貫した対話型AIアシスタントを提供し、営業、サービス、マーケティングなどのチームの生産性向上と顧客体験の改善に貢献します。組織独自のデータを活用し、人間の舵取りによる信頼性の高いAIインタラクションを実現。カスタマイズ性にも優れ、CRMの未来を形作る革新的なソリューションです。Einstein Copilotが切り拓く、AIを活用した新たなビジネスの可能性にご期待ください。
